中学受験はなぜ盛り上がり続けるのか

 

 

(ペイレスイメージズ/アフロ)

 

 

2月1日より始まった東京地区の中学受験も概ね終了しました。多くの受験生がチャレンジし、悲喜こもごもの結果がありました。中学受験については長きにわたり、やり過ぎ感を指摘する意見もありますが、今年も結果的には多くの子どもたちが挑みました。中学受験がなぜこれほどまでに盛り上がるのかを考えてみると、学歴信仰に加えて4つの要因が見えてきます。

 

 要因1、親は失われた20年世代

 要因2、公立校の学級崩壊

 要因3、放課後問題

 要因4、私学の改革

 

 

 

○批判がありながらも盛り上がり続ける中学受験

今年も中学受験が概ね終わりました。東京地区の初日でありピークである2月1日には多くのニュースで受験に臨む子の様子が流れました。学校の校門に塾の先生が応援に立つのも恒例の風景です。結果が出始めると合格した家庭を中心にSNSに「サクラサク」といった報告がアップされていきました。正式な統計はこれからですが、今年も少なくとも受験者数が大きく落ち込んだことはなさそうです。

 

一方で、加熱する中学受験については長きにわたり、批判の声があります。

・小学生に無理やり受験をやらせて勉強嫌いになる

・小学生が夜中まで勉強することになり、心身共に疲労する

・親子関係が悪くなる

・非常に高額な塾代、子育てにお金がかかることは少子化の大きな要因となっている

・社会が予測不能な変化をしており、記憶中心の受験学習に意味がなくなっている

このような批判がありながら、中学受験の熱は近年収まる傾向がありません。なぜなのでしょうか。依然として学歴信仰が根強いこともありますが、加えて小学校現場を見ていて気づく要因が4つあります。

 

 

 

 

○要因1「親は失われた20年世代」

2020年の人口ピラミッド(国立社会保障・人口問題研究所)
2020年の人口ピラミッド(国立社会保障・人口問題研究所)

現在小学6年生(12歳)の親たちは、1970年代生まれの人たちが中心です。1970年代の生まれの親たちは「団塊ジュニア(1971~74年生まれ)」を含む世代であり、人口分布では1973年生まれ(本年45歳)が日本の年代別で最も人口が多い世代となっています。この世代はライバルが多く、自身の競争には苦労してきました。一方、この世代の多くが大卒で就職をする1996年は就職において「超氷河期」と言われた時代です。バブルが崩壊し、前年の1995年の就職が「氷河期」、それよりさらに悪くなった「超氷河期」でした。一方、この世代はまだまだ「良い大学→良い就職→生涯安泰」という価値観のもとに育てられました。それを信じて苦労して受験競争をしたものの、結果的には厳しい就職環境で何を信じて良いかわからなくなってしまったいわゆる「失われた20年」のあおりを思い切り受けました。今の6年生の保護者たちの多くがその世代なのです。親たちは昨今の社会の変化を感じ「受験だけが全てでなはない」と思いながらも「何を信じて良いかわからないから安心材料として」「せめて我が子だけは」と受験に走ってしまう、という現状があります。中学受験に疑問はありながらも、「ではどうすれば?」と代わる答えがないのです。

 

 

○要因2「公立校の学級崩壊」

現代の公立小中学校ではいわゆる“学級崩壊”への対策が大きな課題になっています。小学校現場はなかなか大変な状況が続いており、特に中~高学年にかけて学級崩壊が起こることがあります。学校現場を見ていると、特に男子がクラスを荒らしてしまうケースが多くあるように感じます。女子に比べてまだまだ幼い男子が集団にうまく適応できなかったり、受験のストレスで授業を荒らしてしまったりするケースもあります。結果的に、このような荒れたクラスを小学生時代に体験することで、「このメンバーと同じ中学に行くのは辛い」と思って受験を目指す子がいます。

また、中学生はそもそも非常に難しい年頃で「中1ギャップ」という言葉もあるとおり、小学生から中学生にかけて心のバランスを崩したり、不登校になったりするケースは多くあり、近所の学校の評判は耳に入りやすいこともあり、結果として「公立の中学校は不安がある」という評判が伝わり、それも親子を中学受験に駆り立てることになります。

 

 

 

○要因3「放課後問題」

「小1の壁」という社会問題があるように、現代の保護者にとって“小学生の放課後”は大きな心配事です。特に共働きの家庭が増えて、その問題は加速しました。学童保育の利用者数は年々増え続け、最新の厚労省の統計では109万人を超えました。これは20年前と比べて3~4倍の利用者数です。学童保育は従来は小学3年生まで(概ね10歳まで)とする自治体がほとんどでしたが、2015年4月の法改正によって小学6年生までに拡大されました。しかし、実際に場所が広がったわけではないので、未だ「実質的には小学3年生までが主流になっている」学童保育が相当多くあります。小学3年生まで毎日きちんと預かってもらう環境で過ごした子たちの4年生以降の安心な居場所として塾が選ばれるのです。「子どもの預け場所を兼ねて塾に行っている」「家でゲームよりは塾の方がいい」という保護者は数多くいます。また、小学校中高学年が放課後に地域で遊ぶ環境が減ってきたこともあり、「塾に行かないと友達に会えない」という子も多くいるのです。

「受験をするかどうかわからないけどとりあえず」塾へ行き、「せっかく塾に行ったから少しでも」と受験をする、そんな親子も数多く見かけます。

 

 

 

○要因4「私学の改革」

少子化の影響により、現在も中堅以下の私立中高は生徒の確保が楽ではない状況が続いています。結果的にこの間、危機感を持った私立中高の改革が進みました。御三家等は健在なものの、親世代が受験をした頃と比べると上位校や人気校の顔ぶれはだいぶ変わってきています。中堅以下だった私学も面倒見の良さやアクティブラーニングや国際教育などで特徴を出してきています。最近の人気上昇校の傾向は下記のものです。

 

 

1、大学付属の中高

2020年の大学入試改革を控え、先の見えない状況の中で確実な進路が保証される大学付属校が支持されています。また、小学生に熾烈な受験をさせることで「こんな思いは一度だけにしてあげたいから大学付属にしたい」という親の声も多く聞かれます。

 

2、改革を進めた伝統校

私立中高は大正から昭和のはじめ頃に開校した学校も多く、ここ数年に創立100周年を迎える学校も数多くあります。そのような伝統校も昨今生き残りをかけて改革が進んでいます。特に周年があると学校は寄付なども集まりやすく、校舎の新築なども含めた改革機運が一気に高まります。伝統校はもともと大学への推薦枠などをしっかりと持っていることも多く、大学進学先の候補もあり、新しい教育も行うことで再評価されている伝統校が人気を集めています。

 

3、公立の中高一貫校

公立の中高一貫校は非常に人気が加熱しています。このような学校の試験は「適性検査」と呼ばれ、主に考えて答える思考重視のスタイルです。ですので、このような中高を目指す子は専用の塾に行くことも多くあります。思考重視のスタイルは2020年度の大学入試改革にも合致しており、「大学入試対策にもなるし、公立で中高まで行けるし」と良い落としどころになっていることもあり、高い人気が続いています。この動きを私学が追随し、私学でも「思考力型入試」と言われるものが昨今増えています。

 

 

 

○声を大にして言いたいこと

今年も中学受験が終わり、すでに来年の受験に向けた新年度が始まっています。遅い時間の電車で塾帰りの子どもたちを見る風景も珍しくなくなりました。受験を始める年齢は年々早まり、いまは主に小学3年生から塾通いが始まります。私たちは小学生の放課後のアフタースクールを運営していますが、秋から冬にかけて「塾に行くからもうアフターにあまり来られないかも。。」と寂しげに言う子の声を切ない気持ちで聞くことになります。そんな時には「塾を応援しているよ、でもアフターにいつでもおいでよ」と声をかけると嬉しそうにしてくれます。

受験そのものが悪ではないと思います。それによって輝く子、自己肯定感を得る子もいるからです。そして塾の先生も子どもたちの期待に応えようと夜な夜な必死に頑張っている姿を見かけます。

しかしそれよりも声を大にして言いたいです。

 

 

 

「物語は始まったばかりだ!!!!」

受験だけが人生ではない、ましてや年端もいかない年代での試験など、人生100年の時代においてほんの始まりです。これからいくらでもドラマがあって、その物語のほんの序章のお話です。誰もが人生どこかで頑張るのに適した時期があるでしょう。だから小学生の時にそれが来なかったらまたどこかで来るので、気軽に考えれば良いのです。ましてやこれから予測不能な未来に向かう私たちにとって「中学受験が一生を決める」かのように思ってしまうのはどう考えても理にかなっていません。

中学受験はどうか加熱し過ぎには注意をして、前向きでエネルギッシュな小学生時代を送ってほしいと願っています。

 

 

平岩国泰  | 放課後NPOアフタースクール代表理事

 

 

ヤフーニュース 2018.2.14 から転載

 

 

 

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