毎年話題になる東大合格者数ランキングの常連校と言えば、開成(東京)、筑波大附属駒場(東京)、灘(兵庫)、桜蔭(東京)、麻布(東京)、栄光学園(神奈川)あたりが有名。そういった超進学校では、クラスの半分以上が東大に進むことも珍しくない。しかし中には“超進学校ゆえの苦しみ”を味わう子もいるようだ。ここでは開成中学に入学したものの、東大に進学しなかった2人のケースを紹介しよう。
Aさん(40代)の両親はともに高卒で、教育にはまったく無関心だったが、Aさんの小学校の成績が飛び抜けて良かったため、教師は両親に中学受験を勧めた。そこでAさんは小学6年生の1年間だけ塾に通い、「家から近かったから」という理由で開成中学を受けると、見事合格。しかし最初の試験で、いきなり挫折を味わうことになる。
「中1の最初のテストで、順位がほぼビリだったんです。これまでテストで1番以外の順位を取ったことがなかったので、猛烈にショックを受けました。周りにも似たような子は何人もいて、机に突っ伏したり、泣き出したりする子もいました」(Aさん)
もちろんそれで発奮する子もいるのだが、「完全にやる気を失ってしまった」というAさん。その後これでもかというぐらい遊びの道にハマってしまい、東大は「受けもしなかった」という。ただ、本人には東大コンプレックスはないが、周りはそうは見てくれないそうだ。
「就職活動の時は、たびたび『開成って、あの開成?』みたいなことを言われました。『何で東大じゃないの?』とズバリ言われたことも。東大に行かない子の方が多いんですけど……。就職してからも『高校はどこですか?』『開成です』『もしかして東大ですか?』『いや……、東大ではないです』といったことは、数えきれないほどありました」(同前)
別のBさん(20代)の両親はともに大卒で、猛烈に教育熱心だった。小学3年生の夏休みが終わると塾に通わされるようになり、小6の頃の帰宅時間は22時頃。追い込みの時期になると、1か月の塾代は20万円に達していたという。努力の甲斐あって、補欠で開成に滑り込んだが、地力の差はどうにも埋められなかったそうだ。
「自分は補欠合格だったので、授業についていけるのか心配だったのですが、レベルの高さは想像以上でした。周りの子はみな、教師が言ったことを一発で理解してしまうような子ばかりなので、ものすごいスピードで授業が進んでいった印象です。
それでも必死に予習や復習をして、何とか食らいついていましたが、中3ぐらいで授業についていけなくなりました……。その後はどれだけ歯を食いしばって勉強しても、差は開くばかりでした」(Bさん)
Bさん本人は完全に東大進学など諦めていたが、両親が「せっかく開成に入れたのに、東大以外に行くなんてもったいない!」と主張したため、受験校を決める際は大揉めに揉め、その件は今も親子に深い禍根を残しているのだとか。ただAさん、Bさんとも、学校に対しては悪い感情は一切なく、良い友人にも恵まれ、「通ってよかった」と思っているそうだ。
マネーポストweb
2018.5.22