中学受験に見る首都圏の沿線格差「路線ブランドと進学率は一致する」

 

「人生は、途中からじゃ変えられねぇーってことだよ! 絶対、無理なんだよ!」

 これは、TBS系ドラマ『下剋上受験』の中で、中卒の父(阿部サダヲ)が叫んだセリフである。小5の愛娘も落ちこぼれだったが、「佳織は、まだ間に合うから……」と、親子で最難関中学に挑んだ感動の実話だ。


 このドラマよりも話題になったのが、芦田愛菜ちゃんの名門女子中学合格だろう。ただでさえ芸能活動で忙しいはずなのに、どうやって最難関校に入れたのか。子を持つ親ならば誰もが関心を持つところだ。

 それにしても、子供の教育が重要であることは言うまでもないが、中学受験というのは早すぎではないか。遊び盛りの子供たちが、遅くまで塾に通い、家では勉強漬けである。なぜ、そこまでして中学受験に駆り立てられるのか? 実は、中学受験が人生に及ぼす影響は、まったく侮れないのである。

 東大合格者数(2016年)で断トツ1位の開成は、その生徒たちの7割以上が中学からの入学者だ。同じく3位の灘、5位の渋谷幕張では、その比率が8割以上にもなる。それどころか、灘と肩を並べる麻布を始め、トップ10に入る聖光学院、桜蔭、栄光学園、駒場東邦は、高校からの募集がない完全中高一貫校だ。

 おわかりだろう。東大の合格者に関しては、中高一貫校が圧倒的なのである。そして、その中高一貫校への切符をめぐって、早くも小学生の間で戦いが繰り広げられるのだ。

 もちろん、小学生のうちから東大にこだわる家庭は稀だろう。しかし、高校受験の労力を省き、充実した中高生活を過ごし、大学受験の準備も十分にできるため、中高一貫校は人気を集めるのだ。子供にまったくやる気がなければ仕方がないが、そうでなければ、親子で中学受験に挑む価値は大いにある。

 中学受験というのは、東京などの一部の地域を除いて一般的なものではなく、その実態は広く知られていない。しかし、知らぬ間に、子供たちの将来に関わる競争が始まるのである。しかも、中学受験の準備は小4から始めるのが一般的だ。

 

 

中学受験が盛んなエリアとは

 では、中学受験が盛んなエリア、そして鉄道沿線はどこなのか? 

 中学受験に関するデータは限られるが、首都圏では東京都と横浜市、川崎市が統計データを公表している。このようなデータを公表するところは、それだけ中学受験が盛んなのだろう。

 東京都については、都内の私立・国立中学への進学数が公表されているが、都外の中学への進学については、公立、私立、国立の区別がない。

 ただし、筆者はそのほとんどが私立中学への進学だと判断した。この数字が大きな影響を及ぼすのは町田市ぐらいで、神奈川県の私立中学への進学者が多いためだと想像されるからだ。

 こうしてデータを分析してみると、トップの文京区では46%という驚異的な数字になった。中学受験に失敗して公立中学へ進学した人がいることを考えれば、おそらく過半数の児童が中学受験をしていると思われる。こういうところでは、中学受験をしないほうが肩身の狭い思いをするかもしれない。

 一方、武蔵村山市は3%なので、クラスの中に中学受験をする児童がいるとわかれば、それだけで話題になるレベルだ。もちろん、全国的に見れば文京区のようなところが異様であり、武蔵村山市のようなところが一般的である。ともあれ、都内といえども驚くほど地域差があることがわかる。

 地図で見ると明らかだが、文京区、港区、中央区、千代田区が40%以上で山手線の東側あたりがもっとも高い。一方で、東京での住宅地の人気は西高東低だと言われており、中学受験でも同じ傾向がある。東側の足立区、葛飾区、江戸川区では15%を割り込み、数字が一気に下がるが、西側は杉並区まで行っても32%を維持する。

路線別に比較すると

 路線別に比較してみよう。横浜駅に向かう路線では、JR京浜東北線と京浜急行線が、品川区、大田区、川崎市南部、横浜市鶴見区を通るのに対して、東急東横線は、目黒区、川崎市中原区、横浜市港北区を通っており、東急東横線沿線のほうが中学受験の比率が高い。

 東急田園都市線と小田急線は、どちらも町田市南部に向かって並行に走る路線で、都内でも中学受験比率の高いエリアを通る。この路線間では差がほとんどなく、神奈川県に入れば、東急田園都市線は横浜市青葉区、小田急線は川崎市麻生区になり、県内でも中学受験比率が特に高いところだ。明らかに、両路線の沿線には中学受験をする層が集まっている。

 高尾に向かって並行する京王線とJR中央線では、前述の東急田園都市線と小田急線に比べると少し数字が下がる。

 私立・国立中学への進学率は、神奈川県内よりも都内のほうが高いと思われるだろう。しかし、小田急線が通る神奈川県川崎市麻生区は20%、京王線が通る東京都府中市は10%で、近接する自治体でありながら都内よりも県内のほうが圧倒的に高い。都内と県内の違いよりも、路線の違いの方が明確に表れるのだ。

 その京王線とJR中央線で比較すると、JR中央線は 小金井市、国分寺市、国立市、武蔵野市と、明らかに中学受験が盛んなエリアを通っている。武蔵野市は、東京西部では断トツの28%で、その中心には吉祥寺がある。住みたい街として人気のある吉祥寺は、中学受験をする割合も高いのだ。

 練馬区、西東京市は、中学受験比率の高い中野区、杉並区、武蔵野市の北側に隣接しているにもかかわらず、数字がガクッと下がっている。路線で言えば、前者がJR中央線で、後者が西武新宿線、西武池袋線の沿線である。ここでも、沿線の人気との相関関係が明らかに見られる。

 北側に行けば数字が下がる傾向がある中で、北区だけは21%と高い隣接する足立区が13%なので、その違いが際立つだろう。北区の中心には赤羽があり、やはり住みたい街として人気がある。路線では、赤羽には埼京線、京浜東北線などが通っているが、これらの沿線は、千葉方面の路線に比べると数字が高いと言えそうだ。埼玉県と千葉県のデータがないため、これ以上の分析ができないのが残念である。

 

これらの結果から、東急東横線、東急田園都市線、小田急線、JR中央線の沿線は高く湾岸沿いを走る京浜急行、JR京浜東北線(横浜方面)では少し下がり、埼玉県西部に向かう西武新宿線・池袋線、東武東上線は低かった。(データは限られるが)JR常磐線、京成電鉄などの千葉方面は、さらに低いはずだ。まさに、鉄道路線のブランド力と一致する結果になった。

人々の格差まで固定化してはいけない

 ここに、厳しい現実が見え隠れする。

 私立・国立中学を目指す子供たちは、ほとんどが塾へ行って勉強するが、その費用は、(小4から通わせると)総額で200万円を超えると言われている。当然ながら、私立中学・高校の学費は高い。経済力のある家庭だからこそ、ブランド力のある路線に住み、高い教育費を払い、子供たちを中高一貫校で学ばせることができる。

 そして、私立・国立の中高一貫校に進んだ子供たちは、大学受験で公立高校の生徒を圧倒し、高い学歴を得る。そんな彼らが世に出れば、経済力を得て、ブランド力のある路線に住み、子供たちに高い教育費をかける……。格差が世代を超える現実がありそうだ。だからこそ、『下剋上受験』はドラマにもなるのだろう。

 路線ごとにブランド力の差ができるのは仕方がないとしても、人々の格差まで固定化したら社会の活力が失われる。塾や中高一貫校は有利な条件だが、それだけで学歴が決まるわけでも、人生が決まるわけでもない。親世代の筆者としては、やはりすべての子供たちにエールを送りたいと思う。

 

 

週刊女性PRIME 3/16(木)

 

 

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