中高一貫校でグローバルな人間が育つ理由


■「公立のほうが多様性に富む」は本当か

 私立中学よりも公立中学のほうが多様性があると、要するに私学には多様性が乏しいと、一般的にはいわれることが多い。しかしそれは本当か。

 たしかに公立の中学校にはさまざまな家庭事情の生徒が集まる。一方、私立中学に通うような子供の家庭はたいていの場合経済的に恵まれている。その意味ではたしかに公立のほうが多様性がありそうだ。

 しかしである。この場合の多様性とは、あくまでも家庭の経済状況についての多様性にすぎない。

 公立の中学校の生徒は、ほとんど徒歩で通学できる圏内の、地元の子供ばかり。同じ公園で遊んで、同じ商店街で買い物をして、週末は同じショッピングセンターに家族でお出かけする。半径数キロ圏内で完結してしまう狭い文化圏に住んでいる。

 この状況、近年マーケティング業界で話題になった「マイルドヤンキー」の生態にそっくりではないだろうか。

 マイルドヤンキーとは、一見ヤンキー風ないかつい風貌をしていながら、実は極度に内向的で上昇志向が乏しく、大人になっても小中学生時代の地元の友人とばかりつるみ、半径数キロの生活圏に閉じこもっている人たちのこと。仲間同士のしがらみにとらわれており、みんなで似たようなファッション、音楽、会話を楽しむ。多様性とはほど遠く、挑戦しない、内向き、保守的、臆病などという形容詞が連想される。勝手知りたるホームグラウンドから出ることがほとんどないのだ。

 家庭の経済的な状況に幅があることを多様性と呼ぶのなら、たしかに公立中学のほうが、多様性が豊かであるといえる。しかしそれを多様性と呼び、多様性があるほど好ましいというのであれば、格差社会が進行するほど多様性が豊かになり、学校としては好ましいということになる。果たして本当に、それが学校に存在すべき多様性なのだろうか。

 一方、電車に乗って私立中学に通う子供たちは、常にアウェイの状態にある。毎日、生まれ育った生活圏を飛び出して学校に通うからだ。

 学校には自分が生まれ育った生活圏とはまったく違う地域から通ってくる友達がいる。小さいころ遊んでいた公園も違う。小学生のころに良くやった遊びも違う。休みにやるドッジボールやトランプなどのゲームのルールも違う。高層マンションが建ち並ぶ都心から通う生徒もいれば、ベッドタウンと呼ばれるような郊外から通う生徒もいる。休日に友達の家に遊びに行こうと思ったら、電車の路線図を確認して、何度も乗り換えて、見知らぬ町を歩かなければいけない。やっとのことでたどり着いた友達の家の近所で、その地域の子供たちと一緒に遊ぶことになるかもしれない。だとすれば、自己紹介からはじめなければいけない。


■アウェイな環境でグローバルな素質が育つ

 このように、4月の中1の教室は、まるで未知との遭遇の連続となる。毎日が冒険だ。それぞれの地域にそれぞれの文化があり、地域文化の多様性が教室の中にもたらされる。国境をまたぐわけではないが、これだって立派な異文化交流だ。これぞ学校の中にあってほしい多様性ではないだろうか。

 私立中高一貫校の中には、積極的に帰国子女を受け入れている学校もある。これも学校の中に多様性をもたらすための工夫の一つである。親の所得という意味での多様性は広がらないが、生徒がもつ文化的背景の多様性は広がる。

 それぞれ違った風景を見て育ってきた生徒たちが集い、彼らがお互いの文化を共有するのだ。

 中高一貫校の教育については、拙著『進路に迷ったら中高一貫校を選びなさい』(ダイヤモンド社)をご参照いただきたい。

 現在「グローバル人材」が必要だとされている。では「グローバル人材」とはどういう人のことをいうのだろうか。多言語ができる?  プレゼンテーションやディスカッションが得意?  いろいろな条件を挙げることができそうだが、ひと言で言えば、「日本という足場を離れて、常にアウェイで戦える人」ということではないだろうか。

 常にアウェイなのだから、「あれがない、これも足りない」というようなことの連続を経験することになる。助けてくれる人も近くにはいない。そんな状況では、「とりあえず手元にあるものだけでなんとかする力」がものをいう。ありあわせのものを使って最善を尽くすことができる力といってもいいかもしれない。

 だとすれば、「グローバル人材には、これとこれが必要だから絶対に身につけておくように」という発想自体グローバル人材的ではないと私は思う。

 手元にあるものだけでなんとかする、覚悟と知恵と度胸こそがものをいう。「あれがなければ戦えない」「これが足りなかったから負けたのだ」というような言い訳は、もっともグローバル人材的ではないということになる。

 その点、私立中学に通う生徒たちは、毎日アウェイ。地元という足場を離れて、異文化交流することに慣れている。

 グローバル人材的な感覚は、こうやって少しずつ自分の生活圏を広げていくことで磨かれていくものではないだろうか。「これがグローバル教育だ」というようなパッケージ商品はあり得ないと私は思う。

( 2015.10.18  プレジデントから引用)


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