2014年10月14日 読売新聞
秋から冬にかけてのスケジュールは、入試を控えた6年生にとって、言うまでもなく大切です。そこで大まかな段取りをお伝えしておきます。といっても「気構え」中心に書いてみます。
シールと目印で「二度と間違えない」ノート作り
まず、「昨日より今日」を何より大切にしてください。これはもちろん学業成績のことですが、日々の勉強の心掛けでもあります。その心は「昨日はできなかった問題だけど、今日、同じ問題が出されたならできる」ということです。自分で「昨日より今日」シールを作って、ノートのその問題にシールを貼るのもいいでしょう。
算数でも何でも、おそらくこうした問題はこれから毎日出てくるでしょう。たくさん出てくれるほど実力が伸びるのですから、毎日が充実します。
でも、一度できたらもう二度と間違わないか、というと、そこが注意を要するところです。二度と間違えず、このシールが「できる」保証になるためには、ノートに「気づき」をカラーで目立つように記すことです。「まちがい」を「まちがい」のままノートにしておくと、「まちがい」の方を記憶してしまいがち、つまり同じ間違いをしがちなのです。そうならないための方法が、「こうすれば正解できる」という一本の補助線や、正しい考え方を記した注意書きなのです。
こうしたノートにしておけば、もう一度ノートをみた後に(このノートは前夜に書けば翌朝、そして1週間後、あとは1か月後くらいの間隔でチェックします)「ああ、あれあれ」と、修正点を思い出せます。
あきらめないで、一歩ずつ…入試当日で最高の状態に
次に、大切なことは目標の入試の日まで一歩ずつ力をつけていって、その入試日を一番良い状態にもっていく、という心構えです。
目標の入試の日は、多くの首都圏の受験生にとっては2月1日になるのでしょう。そこから逆算して、11月には、例えば「最も弱い理科の天体を、せめて標準的なレベルの問題は解けるようにしておこう」とかいったスケジュールが立てられます。
ただ、この心構えの一番の効き目は「あきらめない」ということなのです。
恐らくスポーツでも勉強でも、調子の良い時と悪い時があるはずです。自分では努力していても周囲で様々なことがあり、思うように結果が出ないこともあります。
しかし、それは誰しもそうなのです。そこで気力を落とし、投げやりになれば結果が良いわけがありません。途中の不調は、むしろ気を引き締めるチャンスだ、くらいに思うことです。
ウサギとカメの話ではありませんが、気を緩める人も多いのです。力はあっても気が緩めば、普段正解する問題が解けないのが、人間の弱みです。
最後は「やることはやった」と言えるように
このように「昨日より今日」「(例えば)2月1日を絶好調で迎える」という気持ちをもてば心のスケジュールは万全です。
おそらく、こうした気構えだけで本当に大丈夫だろうか、という心配性の人もいるでしょうが、そんな人のために「人事を尽くして天命を待つ」という故事成語を最後にお伝えしておきます。
「人事を尽くす」とは、中学受験の場合なら、「昨日より今日」と考え、毎日「わかる」ことを増やし、2月1日を絶好調で迎えられるように、多少のことならへこたれないように努力を続けることです。そうすれば「やることはやったのだ」という自信がつきます。
この気概で受験に臨むことができれば、他の受験生より合格ラインに一歩近づいていることをお伝えしておきます。というのも「やることはやった」と言えるということは、「結果はついてくる」という境地に立っているからです。
万一、不合格でもそのことを超える自分への信頼ができ上がっているので、不合格が気にならないようになっているのです。
なぜなら、もう自分を信頼しているわけですから、試験で何点か及ばなかったとしても、自分を成長させ続ける確信をもっているのです。「次の機会は必ずものにできる」と、自身の中で確信できる状態なわけです。このことは、合格以上に大きな達成と言えるでしょう。