2014年7月9日 読売新聞
人に話をきくときに、「なぜ、そうなのですか?」という質問をしますね。
しかし、同じ「なぜ」「どうして」という疑問符が「なんで(どうして)そうなるの!」といった言い方になることもあります。お母さんからそんな風に言われたお友達はいませんか?
これは「問う」のではなくて、「問い詰めている」ので、同じ「なぜ」でも、理由を聞いているわけではありません。単に相手を責めているのです。
言われた方はつい、疑問に答えるつもりで「~だから」と言いがちです。しかし、それでは「言い訳をしている」と受け取られて、一層その怒りを燃え上がらせてしまいかねません。
「落とし穴」に落ちて当然
これは考えてみれば妙なことなのです。
中学受験の問題でいえば、そのほとんどが「誤答誘導」といって、落とし穴のある問題になっています。その落とし穴に見事に落ちてしまうと間違いになります。落とし穴に気づいて避けて通れば正解になります。でも、落とし穴に落ちるように誘導する問題ですから、穴に落ちて当然なのです。
間違いを避けるためには、踏むべき手順があります。その手順通りにやれたかどうかが、大切なことです。
この手順は、間違えながら覚えるところがミソです。間違いにこそカラクリが潜んでいますから、間違いをじっくり反省することこそ、本当の勉強になります。
間違いは責められるものではなく、普通のことです。間違ったら心の中で「しめた!」くらいに思った方がよいのです。
何しろ落とし穴に気づいたのですから、こんな愉快なことはありません。でもその落とし穴に一度は落ちてみないと悔しさは感じないでしょう。間違えてバツをもらう経験も大切なのです。
「こう解いた」友達に話して一石二鳥
ただし、こうした「手順」を考えるほかに、そもそも問題をどう考え、解答を組み立てるか、という大きな方針はもっと大切です。
計算や漢字などの知識を確認する問題は「解いた! 解答をみた! 正解だった! おしまい!」でよいのですが、算数の文章題や国語の読解のような、じっくり取り組む問題は違います。こういった問題は、「手順」を確認したり、「方針」を説明したりしながら取り組むことこそが大事になります。言い換えれば、はじめから「なぜそう解いたの?」という質問への答えを頭に準備し、あとで人に教えるかのように解いていくことが、とても大切なのです。
「そんな勉強法は、時間もかかるし大変だ」と思うかもしれませんが、このやり方で一番得をするのは、あなた自身です。なぜなら、人に教えることによって自分の中で知識を整理して、定着させることができるからです。
問題を解いたあと、先生やお友達、あるいは家族に、「この問題はこう考えて、こう解いた」と説明できるといいでしょう。成績が少し劣る友達に、「こうやって問題を解いた」と解説してあげると、その友達も助かる上に、あなたの力もつきますよ。