中学入試は宝くじ 落ちても君の能力不足ではないよ

 

元塾講師でもあり、大阪市の敷津小学校で民間人校長を務める山口照美さんが、中学受験について語ります。


 中・高・大すべての入試に10年以上関わる中で、子ども達に伝えてきた言葉だ。大学入試は絶対ではない。だからこそ、受験生としての努力や意志が問われる。「何となく受験するならやめてええねんで」と塾や予備校でダレる受験生を叱ってきた。高校入試は、思春期の子ども達の真剣勝負。怠けたい欲望と闘い、自分の将来のために奮闘する。この時期に、受験をすることは自分を見つめる機会にもなる。だから「通過儀礼」と呼ぶ。

■中学入試は結果より過程が大事と伝えておく

 私は高校入試推奨派だ。体も心も、受験のプレッシャーに耐えるだけ成長している。
 一方、中学入試には賛成しきれない。男女入り交じって遊べる最後の数年の時間を、奪うことになる。成長にもばらつきがあり、膨大な量の暗記やトレーニングに耐えられるだけの体力・気力が育っていない。だから私は「中学入試は宝くじ」と定義する。当日のプレッシャーや体調不良で落ちる子がいる。それは、君の能力不足でも努力不足でもなんでもない。中学入試は、入試日程次第で倍率も毎年変動し、「運」の要素が強い。それに12歳という幼さで臨んでいる。不確定要素満載なのだ。

 だからあえて「宝くじ」と言っておく。子ども達の傷を、少しでも小さくするために。

 「この宝くじの当たりは、志望校に合格することだけとちゃうねんで。もう君たちは、宝くじを買ってこうして塾に来て、勉強をがんばってるやん。それって、実はもう宝くじに当たってるのと一緒やねんで。これから、たくさんのことを勉強する。自分で勉強する方法も覚える。勉強の仕方は、一生使える。めっちゃ賢くなる。……それって、もう『当たり』やん!」

 中学受験を、知的な喜びで満たしたい。国語の多彩な文章を読み、自分の考えを書く中で一生役立つ言語能力を育てたい。そう思って取り組んできた。目の前にいる友だちを蹴落とすのではなく、教え合い、励ましあってゴールに向かってほしい。合格だけが、すべてじゃない。大事なのは、この日まで積み重ねてきた努力だ。

 「最悪の受験はな、入試会場で配られたテストを見た瞬間に『あーもっと勉強しとったらよかった!』と後悔する受験や。君たち、暑い日も寒い日もがんばってきたやん。『もうやることは全部やった』って思える受験にしよう。それで落ちたら、そんな学校入ったらんでええ!」

 今、無邪気に校庭でサッカーをしている5・6年生を見ていると、この伸び伸びした姿こそが本来の12歳なんだなと思う。かつて塾生から奪った以上のものを、私は与えられていただろうか。

■公立小だからできること、塾が得意なこと

 敷津小は小規模校なので、受験生は少ない。他の学校の先生からも話を聞き、公立小から見た中学受験を改めて知った。

 先取りし過ぎているため、小学校の授業が退屈になる。受験ストレスをぶつけるかのように、教師をバカにし、授業を妨害する児童がいる。反対に、学びあいの場面で他の児童に教えたり、導いたりする子もいる。卒業に向けた大切な時間を、休んでしまう児童に対して担任が感じるもどかしさも、今は分かる。

 

塾では教えられない、さまざまな体験が公立小学校にはある。それは、家庭環境がある程度そろっている私立小学校にも無いものだ。地域で共に育ち、多様さを学ぶ。特に、10カ国にルーツを持つ児童が通う敷津小で、子ども達が学ぶことは大きい。体験型のキャリア教育や、研究授業を経て全校児童文集を作る取り組みも、塾が片手間にやってかなうものではない。

 同時に、塾講師の視点で小学校を見てみると、もどかしい場面もある。学校は「勉強のできる子」のイメージが塾業界に比べてかなり低い。もっと伸ばせる場面で、「できる子」とみなして放置してしまう傾向がある。本人と保護者が学校外の学習に興味を持たなければ、そのまま伸び止まってしまう。

 尼崎市で学力を伸ばした公立小の実践を聞いた。テストを難しくし、そこで点を取れるように宿題を設定し、放課後に残してやらせきる。これなら、塾に行かなくても力はつく。学力の低位層の底上げと、上位層の引き上げが同時に実現できていた。敷津小も次の課題は「鍛える」ことだ。

 結局、点数至上主義か、だから塾出身者はあかんねん、という批判も聞こえてくる。でも、高校入試も見てきたから言える。基礎学力は、中学に入って英語も部活も始まる子ども達を楽にする。学力が無いまま中学へ送り、1年生のうちに自信を失うと、早々に学習からリタイヤしてしまう危険性があるのだ。

 子ども達が夢を持ったとき、一歩踏み出す準備ができているように。学校の評価や点数のためではなく、子どもの未来のために学力をつけたい。それだけだ。

 中学受験の経験は、仮に失敗して公立中学に行った時にも絶大な貯金になる。だからもう一度、言う。志望校に受かるだけじゃない、宝くじ。買わなくてもいい。でも買った以上は、一生ものの力を育てる気持ちでがんばらないと損だ。

 こっそり、保護者の人には問いかけたい。

 私が考える、最悪の受験がもう一つある。ブランドバッグと同列の、親の見栄のための受験だ。中学入試に向く子、向かない子がいる。周りがどれだけ受験しようとも、我が子の能力や希望、親ができるサポートを冷静に考えて判断してほしい。


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